コーティング処理

1.膜の種類の決定

用途条件、使用環境など御知らせ頂いた上で、御相談して膜の種類を決定させて頂きます。 乾燥すべりならばSですが、これには薄膜と厚膜とあり、しかも、さらに各種の組成の異なった膜に区分されています。

2.台金(裏金)

(a) 材質

鋼、鋳鉄、ステンレス、アルミニウムですが、銅合金には密着が弱いので通常薄膜コーティングにしています。軽い接触荷重ですべる所には薄膜で御役に立っています。
粉末焼結部品(鉄系)はとかく多孔性であり、しかも油が滲み込んでいると油抜きする必要があり、台金としては好ましいものではありません。
鋳鉄、アルミニウムの鋳物も鋳巣やピンホールの多いものは、コーティング前に十分空焼き(カラヤキ)して孔に滲み込んでいる油、石けん、ガスなどを完全に除去してからコーティングします。
金、銀など貴金属部品の一部にコーティングする使用法もあり、ガラス、セラミックは粗面になっていればコーティングできます。

(b) 寸法

フロンメタルSの厚膜は0.10~0.15mmで使用できるように台金の寸法をあらかじめ出しておいて下さい。 内径は0.20~0.30mm大きく、軸ならば細かくしておいて下さい。 薄膜でも精密部品で、仕上げ精度の厳しいものは取り代を付けて仕上げる必要があります。 フロンメタルDはコーティング膜の厚さが0.40~0.45mmです。これを仕上げして、0.15~0.25mm位で使用するのが適当です。

(c) 接着性の強化のための溝、孔、ローレット加工

使用条件の厳しい場合は、密着を強化する目的でブラスト処理、溝、孔、ローレット加工を施すことがあります。 溝は、外周、内面に深さ0.2~0.5mm V形または、タテ溝、ヨコ溝、リーマー通しでいろいろの形状でコーティングしています。 ローレット加工は深さ0.2mm位が適当のようです。
このローレット加工面にSの薄膜をつけて、研摩仕上げした軸ピンは230℃で200kg/cm2の荷重、90°往復すべりに実用されています。

(d) コーティング前の加工のあらさ、メッキなど

当社ではコーティングする時、必ず表面を研摩紙などで一皮むくということをします。そのためコーティング前の加工のあらさは▽▽程度で十分です。 クロムメッキがしてあると一応メッキを剥がしますので、最初よりメッキしない方が好ましいことです。 アルマイトも剥がすことにしています。その他、各種化成処理してある面も全部コーティング面は金属地を露出させ、あらためて当社の表面処理をします。

3.コーティング

コーティングはエナメル状にした混合液を刷毛、筆、コーティングロッドなどで塗布します。 この塗布は塗布‐乾燥‐塗布を繰り返して薄い膜を重ねて行くことによって厚い膜にするのであって、一度の塗布で厚膜ができるのではありません。 こうして所定の厚さになってから250~280℃で加熱処理します。

4.機械加工仕上げ

通常の軟質金属と同程度で旋削、研削、セーパーができます。

5.コーティング膜の厚さについて

皆様より厚膜はもちろん、薄膜でも削り代をつけてコーティングする御注文が多いのですが、前述のように膜厚を0.3mm以上にすると、膜の強さが密着強さよりも大きくなるのでこれは禁物です。このため削り代をつけてもせいぜい0.3mm位に押さえています。 削り代は0.1mm位は必要なので、仕上げ時の膜厚は0.2mm以上にはできません。
是非厚膜は0.10~0.15mmになるようにして下さい。
また、薄膜は仕上げ時0.02~0.05mmになるようにして下さい。

また、薄膜でさらに平滑性を与え、精度を厳しく押さえたい場合は当方で研磨代として0.05mm位つけて合計0.07~0.10mmにコーティングし、これを仕上げして使用されている御客様もあります。

なお、使用条件が軽いとか、設計上やむを得ない場合等は、仕上げ時の膜厚が0.20~0.30mmをさらに0.4~0.5mmになるようなコーティングを要望される場合があります。これらの場合は膜の材質も少し多孔質にして、内部応力の小さい組成のものをコーティングします。
そして、必要とあればスリットコーティング(Slit Coating)と称して例えば、ブッシュの内面では1~3ヵ所に0.2~1.0mm幅の溝を入れて、膜を区切りした状態でコーティングをします。これは、仕上げ後の面に溝が残りますが剥がれはありません。しかし、熱放散性、耐荷重能力、耐摩耗性は低下します。