フロンメタルSとDの比較
1.製作に関する比較
フロンメタルS | フロンメタルD | ||
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台金(裏金) | 鋼、ステンレス、鋳鉄、銅、アルミニウム、 チタン、セラミック。 |
鋼、ステンレス、鋳鉄、アルミニウム。 | |
台金の形状 | 板、軸、ブッシュ等、複雑形状を問いません。 | 軸、ブッシュ、板。 | |
台金の寸法 | 板:800×800mm位まで 軸:200φ以下、1500l以下 その他:400×400mmブロック |
軸:150φ以下、300l以下 ブッシュ:150φ以下 |
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加熱処理温度℃ | 250~280℃ | 250~280℃ | |
膜 の 厚 さ |
薄膜 | 0.02~0.05mmコーティングのまま使用。 0.07~0.10mmコーティングして後、仕上げして 0.03~0.06mmにします。 |
なし |
厚膜 | 0.20~0.25mmコーティング後、仕上げ。 | 0.40~0.45mmコーティング後、仕上げ | |
特別厚膜0.40~0.50mm仕上げ用ブッシュの 内面はスリットコーティングします。 |
なし | ||
寸法精度 | 機械加工仕上げによります。 | 同左 | |
板 | 厚2.0mmなら800×800位までです。 但し、0.02~0.05mm薄膜。 |
― | |
ブッシュ | 内径500mm位まで。 | 内径150mm位まで。 | |
軸、ピン、ロール | 重量60kg位まで。 | 重量10kg位まで。 | |
ワッシャー | 外径400mm位までで、肉厚任意。 | 外径200mm位まで。 | |
半円形メタル | 外径200mm位までで、肉厚任意。 | 内径200mm位まで。 |
2.コーティング膜の比較
(a)コーティング膜の厚さ
フロンメタルSの厚さ | |
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薄膜 | 0.02~0.05mmコーティングのまま使用。 |
薄膜 (仕上げ用) | 0.07~0.10mmコーティングし、仕上げして、0.03~0.06mmにして使用。 |
厚膜 (仕上げ用) | 0.20~0.25mmコーティングし、仕上げして、0.10~0.15mmにします。 |
特別厚膜 | 0.40~0.50mmコーティングし、0.30~0.40mmにして使用します。 ブッシュ内面はスリットコーティング。 |
フロンメタルDの厚さ | |
コーティング厚さ | 0.40~0.45mm |
仕上げ後 | 0.15~0.25mm |
(b)コーティング膜の強さと密着の強さ
100% ポリイミド |
フロンメタル S |
100% ポリカーボネート |
フロンメタル D |
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引張り強さkg/mm2 | 10.0~13.5 | 5.5~7.7 | 12.5~13.5 | 6.0~8.0 |
伸び% | 9.0~10.5 | 3~5 | 70~80 | 1~2 |
硬度・鉛筆硬度 | 6H | 6H | 3H | 3H |
鋼板との密着力kg/mm2 | 2.0 | 1.3~2.0 | 2.5 | 1.5~2.0 |
金属は普通鋼材が一番密着性が強く、第3表のように2.0kg/mm2を示し、曲げ加工あるいは軽度の圧延ができる位強力です。 そしてステンレス、アルミニウムなどがこれに次ぎます。銅合金は弱いので薄膜コーティング位しかできません。 焼入硬化した鋼にもライニングできますが多少弱くなります。 金属粉末焼結品や鋳物部品のように孔隙やピンホールのあるものはコーティングは比較的に困難であり、密着力も弱くなります。
フロンメタルSでは被膜の厚さは0.02~0.15mmの範囲で使用するのが最適です。コーティング膜の厚さとしては0.5mm位までできますが性能は仕上げ加工して0.10mm位にしたものが最高です。しかし使用条件の比較的小さい所には0.15~0.20mmの厚さで使用しても結構です。
膜の引張強さが6kg/mm2とすると、0.10mmの膜の引張破断強さは0.6kgになり、これは密着力(1.3~2.0kg/mm2)よりも小さいので膜が剥がれる前に破断します。すべてこのように膜の破断強さよりも密着力が大きい状態で使用するので剥離することはありません。
さらに過酷な条件に対しては軸ピンの外径面と円筒の内面にねじ溝あるいはローレット加工して密着を強くして使用されます。また、フロンメタルDではコーティング層を微細多孔質にしてあり、厚さが0.2~0.25mmでも剥離しないようになっています。多孔質のため熱応力の緩和は常にこの孔隙性膜の部分、点で行われています。
3.軸受特性の比較
フロンメタルS | フロンメタルD | ||||||
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動摩擦係数μ | 0.05~0.10 | 0.05~0.15 | |||||
静止摩擦係数μ | 0.05~0.20 | 0.10~0.20 | |||||
耐圧強度kg/cm2 | 2000 | 500 | |||||
許容 | 周囲温度 | P | V | PV | P | V | PV |
P (kg/cm2) と V (m/sec) 及び 最大 PV値 |
-150℃ | 500 | 5 | 30 | 実績なし | ||
20 | 500 | 5 | 30 | 400 | 5 | 30 | |
50 | 500 | 5 | 30 | 250 | 4 | 25 | |
100 | 500 | 5 | 30 | 30 | 1 | 5 | |
150 | 500 | 5 | 30 | ― | ― | ― | |
200 | 500 | 4 | 20 | ― | ― | ― | |
250 | 300 | 3 | 10 | ― | ― | ― | |
300 | 100 | 2 | 7 | ― | ― | ― | |
350 | 50 | 1 | 5 | ― | ― | ― | |
摩擦係数K(×10-6) cm2・sec/kg・m・hr |
0.05~0.1 | 0.1~0.2 |
4.特徴による大きな比較
フロンメタルS | フロンメタルD | |
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台 金 | 鋼、鋳鉄、 ステンレス、アルミ |
鋼、鋳鉄 |
台金の 形状寸法 重 量 |
原則として制限はない。 設備上制限あり。 長いパイプの内面は困難。 |
重量10kg位までがよい。 |
使用温度の 範 囲 |
-270~+350の範囲。 150℃以上では、 このS以上のものはない。 |
常温~100℃熱可塑性樹脂の 軸受、すべり面としては最良 |
最も特徴の 活用できる 使用条件用途 |
乾燥すべりで空中真空中すべり の機器に実用できる。 黒鉛、合成樹脂相手にもよい。 防錆、防蝕 |
常温でのすべり特に食品、 薬品関係の機器(衛生上無害)、 衝撃打撃のある所 |
乾燥すべり 面としての 優 劣 |
優 | 良 |
5.用途の比較
使用箇所、機械 | フロンメタルS | フロンメタルD | ||
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1) | 常温で使用する軸受、 すべり面計測器、工作機械、 一般産業機械 |
S優 | 優 | |
2) | 低摩擦を目的とする所 すべり面、弁、栓、軸 |
S優 | 不可 | |
3) | 高荷重、低速すべり、揺動面 | S優 | 良 | |
4) | 断続的急速すべりの所 | S優 | 室温では優 高温では不可 |
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5) | 高温(150℃以上)の所 | S優 | 不可 | |
6) | 特殊ガス、液体 の影響のある所 |
酸性、溶剤 | S優 | 不可 |
アルカリ性 | S(黒色)優 | 可 | ||
7) | 油潤滑 | S優 | 優 | |
8) | 清潔を必要とする所 繊維、印刷、薬品 |
S優 | 優 | |
9) | 食品衛生関係 | S(黒色)優 | 優 | |
10) | 塵埃、異物の入る所 | 優 | 優 | |
11) | 電気絶縁性を必要とする所 | S優 | 優 | |
12) | ハンダメッキ、加熱物接触 | S優 | ― | |
13) | 防錆、防蝕 | S(黒色)優 | ― | |
14) | 黒鉛摺動体の相対面として | S優 | ― | |
15) | 真空中 | S優 | ― | |
16) | 離型性、金型 | S(黒色)優 | ― |