フロンメタルSとは
1.材質と種類
フロンメタルSは金属(台金)あるいはセラミック成形物表面に合成樹脂層をコーティングしたものです。このコーティング被膜はポリイミド(POLYMIDE)樹脂と4フッ化エチレン(TFE)樹脂(テフロン)を主成分とした混成物です。
また、被膜の組織は硬質のポリイミドが結合材となり、軟質のTFE粉末粒子(テフロン粉末粒子)が潤滑剤として分布しており、乾燥すべり面ではTFE(テフロン)が薄膜になって流動し、一部相手面にも移着してなじみ面を作ります。
この結合材と潤滑材の性質をいろいろ変化することにより、フロンメタルSは次のように各種の用途に適したすべり面ができます。
S - 乾燥すべり。すべり性、耐摩耗性、絶縁性、錆止め。
S(黒色) - 防錆、防蝕、離型、防着性。
2.製品
フロンメタルSはエナメル状にした混合液を鋼、鋳鉄、ステンレス、アルミニウム、チタンなどの台金の任意の場所にコーティングできるので、 製品は全て皆様各社より頂いた寸法形状各種各様の台金にコーティング処理をするものです。
フロンメタルSのコーティング被膜は厚膜として0.10~0.15mm、薄膜として0.02~0.05mmの2種類を基準としていますが、皆様の御要求、用途によってはこれらの中間的厚さのものも作っています。厚膜の場合は削り代をつけてまず0.20~0.25mmにしますので、加工して0.10~0.15mmになるようにして下さい。薄膜はそのまま使用することも可能です。
台金はこれらの一定の膜厚になる製品を得られるよう、コーティングする前に軸なら径を0.2~0.3mm細く、円筒形の内面にコーティングするものは内径を大きくしておいていただきます。
また、コーティングの時300℃まで加熱処理しますので、薄いもの、長いものは変形することがあります。
● 製品例1 ワッシャーなど
写真第1図はすべり面、当て金、案内面、ワッシャーなどを示します。
これらの台金の片面あるいは両面にコーティングし、必要あれば旋削、研削、シャーパー仕上げによって厚さの精度を出していただきます。
フロンメタルSは仕上げ後の膜の厚さがそれぞれの所定の厚さになるようにあらかじめ台金の厚さを前加工しておきます。
コーティングした板材を裁断、打抜などによって所要の大きさ、形状にすることもできますが、通常は製品個々にコーティングしています。
● 製品例2 ブッシュ
写真第2図はブッシュを示します。
フロンメタルSは膜厚を0.10~0.15mmとする場合は裏金の内径を0.20~0.30mm大きく、外径は小さくしておいてからコーティングし、仕上げ加工していただきます。
軸受すき間、あるいは寸法公差に余裕のあるものはコーティング(0.02~0.05mm)でそのまま使用する所も多くあります。
フロンメタルSは内径2mm以上のものにコーティングできます。幅(長さ)は内径の2.0倍位までを通常とします。
コーティングの焼付処理温度である300℃までの加熱で変形するような薄肉のものは、あらかじめ外径研摩代をのこしておく必要もあります。
例えば、鋼管の場合内径40mm外径45mm幅40mmのブッシュでは外径測定で0.01mm位の狂いが生じます。
● 製品例3 軸、ピン、ねじ
写真第3図は各種軸ピンを示します。
あらかじめ直径を所定の被膜の厚さがとれるように細くしておき、コーティング後研削、旋削仕上げして寸法精度を出していただきます。
Sの薄膜(0.02~0.05mm)はコーティングのまま、また厚肉(0.10mm以上)でもコーティングしたままで使用されているところもあります。
コーティング処理は直径2~100mm、長さ1000mm以下を歓迎します。
また、作動ねじのオス、メスの両面に薄膜コーティングして、ゆるみ止め、円滑作動、精度向上などにも効果があります。
● 製品例4 案内面、シリンダー、スライダー、セラミック成形物
写真第4図及び第5図は案内面、スライダー、シューなどの複雑形状体です。
これら寸法、形状のあまり大きいもので、コーティング部分の小さいものは別個に板材をつける、ブッシュをはめる等した方が経済的な場合があります。
現在重量は60kgまで、寸法は400×400×1000mm位の大きさのものまでは処理できます。
また高価な精密部品、金型などの加工不良部分の修正(0.1mm以下)のため、肉盛代用としても役に立っています。