軸受、すべり面の設計

1.用途、使用条件、フロンメタルの種類の決定

フロンメタルSは乾燥すべりの他に各種の条件に適した被膜がコーティングできますが、特に食品衛生が問題となる所にはSよりもフロンメタルDの方が好ましいです。

この他、フロンメタルDは常温で使用する所では、パラフィン含滲のため終始最低の摩擦係数で一定し、耐摩耗性も抜群のため寿命が長く、膜厚0.2~0.25mmでSよりも厚い、衝撃打撃に強い、弱アルカリ性に安全であるなどの多くの用途を有しています。
そのため用途、条件によってはSよりもDをおすすめすることがあります。

純粋の乾燥すべり、軸受としてはフロンメタルSが最高ですが、PV値は従来の実績よりみると20kg/cm2、m/sec以下で使用されているものが多いようです。
しかし、合成樹脂のすべり軸受としては最高性能を有しています。

また、断続使用の場合は少し大きく取れます。寿命は必ずしも摩擦係数より計算された通りにはなりませんが、乾燥すべりの場合既に1万時間以上という例はPV値10以下では多く出ています。特にスライダーベアリング型式にしたものは乾燥すべりにしても、油膜潤滑にしても全く不安も無く、寿命も長い軸受として好評を得ています。

2.寸法精度

仕上げ公差は7~8級が普通です。焼付温度は220~280℃ですから、これらの温度で変形するものは偏肉の心配があります。

3.軸受すき間

合成樹脂と金属は同じすき間でも、その接触当りの感覚は少し違います。フロンメタルSも同じすき間なら金属同士の場合よりもきつく感じます。 これは合成樹脂の弾力の効果です。従ってすき間も合金軸受と比較して大きくして下さい。もしくは許容公差の範囲でなるべく大きくして下さい。

最初からあまりきついとなじみ面の形成が不完全です。なじみ面は徐々に流動して形成されるものです。油潤滑の場合はホワイトメタルより少し大きく、アルミニウム合金と同等という程度にして下さい。

4.相手面のあらさと材質

相手面または、軸の仕上げのあらさは小さい程好ましいことは既に述べました。軽荷重(5kg/cm2以下)では3S位で使用されている所もありますが、一応2S以下を希望します。

特に薄膜の場合は荷重を減少するか、仕上げあらさをよくするかして下さい。相手材質は特に限定しません。仕上げ程度が良ければ、どんな材質でも差はないようです。

大切なことは相手面をできるだけ清浄できれいにして下さい。最初の異物附着は後々影響を及ぼします。相手材の硬さはHV200以上ならば一応実用になっています。

5.防錆処理

無給油軸受の場合すべり面以外の場所の防錆は当然問題になります。

当社ではコーティング前の表面処理として、空焼きして酸化処理をします。これで一応軽度の防錆効果はありますが、必要あらばSの防錆コーティングをします。台金(裏金)がステンレス、アルミニウムの場合は問題ありませんが、鋼、鋳鉄の場合は御希望によりS(黒色)あるいはSの防錆コーティングをしています。